バルミューダフォンの戦略と考察。俺は撤退しないと思う

バルミューダフォン

白物家電メーカーのバルミューダが初となるスマートフォン「バルミューダフォン」をリリースした。良くも悪くも注目を集めたこの製品は、ある意味「大成功」したと俺は思ってる。

バルミューダフォンの情報が初めて飛び交った時に「え、なんで?」と驚いたこと、レビュー記事ではバルミューダフォンを「面白いスマホ」と言っていた部分など、点と点を結び線にして残しておきたいと思う。

バルミューダはデザイン訴求と感覚的訴求、販売戦略の上手い会社

バルミューダは白物家電メーカーで、出している製品は新たなジャンルではなく、トースターとか扇風機とかデスクライトとかを独自に付加価値を付けて高価格で売りさばいている。

バルミューダの製品は

  • デザイン的な要素
  • 感覚的な要素

この2点がウリと俺は思ってる。

「見た目がお洒落(デザイン的な要素)」で「美味しくパンを焼ける(感覚的な要素)」トースター

こんな感じだ。

さらに価値観と利益を出すために高価な価格設定で売りさばく。これがバルミューダの基本的な商売のやり方ではないかと思ってる。

高価な製品のイメージをアップしながら売ることは簡単では無いが、バルミューダは戦略がうまい。俺が色々と見る限りバルミューダ家電のメインターゲットは高級志向の人ではないかと推測している。

高級志向の人は、「高いものは良い」という考え方の人たちで、バルミューダにとっては最上級のお客様だ。なんせ「良いもの」を買ったわけだから、ほっといても高級志向の人は勝手にべらべらと宣伝してくれる。バルミューダにとっては勝手に湧くアンバサダーである。

そして、宣伝するときに奴らは決め台詞も添えてくれる。「価格は高いけど良い」だ。よく訓練された部隊。完璧である。

そういった高級志向の人が自主的に宣伝するには感覚的なことやデザインが語りやすい。感覚的な部分では、「美味い」とか「心地いい」とか。デザインでは「お洒落」とか「美しい」とか。馬鹿でも語れるようにしてる。素晴らしい。

こんな感じで感覚的な部分やデザインなど、数値化が難しく評価がぼやける部分をうまく利用・宣伝してきたことでバルミューダは成長してきたはず。

その結果、「バルミューダは高いけど良いらしいよ」と多くの人に認知されるまでになった。素晴らしい戦略だと思う。あっぱれ。

バルミューダフォンが騒がれた理由

バルミューダフォンが騒がれた理由はズバリ、「高すぎる」ということ。バルミューダフォンのSIMフリー版は約10万円台、ソフトバンク版では14万円台。

10~15万円のスマホは沢山あるが騒がれた。なぜ、そんなことが起こったのか。

スマホは性能に対して相場が決まってるから。

スマートフォンというジャンルは、「この性能だとこの価格」という性能対価格が明確なジャンルなのである。

だから、スマホをちょっとかじっている人がバルミューダフォンを見ると、大体5~6万円くらいが相場であることがわかる。

もちろん、高価でも納得させられる製品もある。それが先進的テクノロジーを詰め込んだ製品だ。

良い例がGalaxy Fold。画面が折り畳めるという先進的テクノロジーを搭載することで、高価でもその付加価値に納得して購入するユーザがいる。

バルミューダフォンにはそれが無い。と言ったら流石に失礼だが、はみ出た価格でも納得できる要素が薄かった。だから騒がれた。

ただ、バルミューダはそんなことは想定済み。

スマホに対し知識ある人はターゲットではない

そもそも、バルミューダフォンはスマホに詳しい人がターゲットではない。なぜなら、バルミューダフォンは情報弱者向けの製品だからである。

俺はバルミューダがスマホ市場に参入するニュースリリースが出た時に、「なぜバルミューダがスマホ市場に?」「なぜソフトバンクと手を組む?」と不思議に感じたことを記事に残している。

え、バルミューダがスマホ出すの?携帯端末事業に参入して5Gスマートフォン開発・販売するってよ

そして、正式発表会が行われてた時に戦略が見えてきた。これは情報弱者商売で、「初代」は今後のバルミューダフォンを展開する上で情報弱者が踏み台になると。

バルミューダ家電は高級志向者が踏み台。バルミューダフォンは情報弱者が踏み台。それは事業を展開する上でバルミューダにとって最も適している層だから。

情報弱者に売りつける利点は?と疑問に思い、実は発売直後に出したレビュー記事では調査もしている。

ガルマックスのレビューを見ている人は気がついているかも知れないが、バルミューダフォンのレビューは、いつもとテイストが違う。

何が違うか。それは、スマホに興味のない人へのヒヤリングが含まれていることである。

バルミューダフォンのレビュー!実機を使って気にいった・気になったポイントと評価まとめ!

バルミューダの真のターゲットは、レビューでヒヤリングした僕の妻であったり、コンカフェ嬢であったり、スマホに対して情報弱者と言われる人なのである。

すでに発表時点でバルミューダフォンは情報弱者商売であると見据えていた。だからこそ、情報弱者と言われる人の反応が知りたかったのでレビューにヒヤリングを組み込んだのである。

そのヒヤリングを行う中で、情報弱者は「何が悪いのか分からない」から騒がれるリスクも少ないし言われるがまま購入してしまうから適した層だったんだなと。

情報弱者が買っても困らない絶妙な仕様が素晴らしい

情報弱者がターゲット=ろくにスマホのことを調べもせず、合っているか合っていないのかすら分からず買う人がお客さんということ。

そこで起こってはいけないことがある。それは一般的によく利用する使い方で不満が出てしまうことだ。

もしその様な事になると、「バルミューダフォンはちゃんと動かない」と情報弱者にまでマイナスイメージを植え付けてしまう。

そうならないよう、コストをできるだけ下げながらもWEBブラウジング、動画視聴、SNS、ゲームなどで不満が起こりづらい構成を吟味したのではないかと思う。

実際に妻などいわゆる情報弱者に該当する人に使わせてみたが、ネットも動画も見れる、SNSも普通にできるしゲームもできた。その結果、「悪い」という言葉は出てこなかったばかりか、「普通に動くし結構良いよね」という始末である。

この仕様でもスマホに詳しくない人、ろくにスマホを使いこなせない人なら、十分な性能である。情報弱者へ売りつける製品としてはよく考えているなと感心した。

バルミューダというブランド力の凄まじさ

バルミューダフォンは強力な武器を持っている。それが白物家電で育て上げた「バルミューダ」というブランド力。

特に女性の認知度は非常に高いようで、Xiaomiなどスマホの世界でトップクラスのブランドは知らなくても、バルミューダは知っている。

そして、「良い」イメージで定着している人が多い。いろんな人にイメージを聞いた内容を簡単にまとめると「バルミューダって高いけど良いらしいよ」だ。高級志向部隊の成果である。

レビュー時のヒヤリングではバルミューダフォンに対する印象はかなり良かった。そして、いろんな人にヒヤリングすると「バルミューダだから良い」というブランド志向の人も少なからずいた。

このブランド力で引き込みながら先述したように情報弱者に不満が出づらい製品を売りつける。というブランド力を使った巧みな情報弱者商売に感心した。俺も次の事業では参考にさせてもらう。

「初代」バルミューダフォンは広告としての役割が強い

あえて「初代」とつけさせてもらう。初代バルミューダフォンが広告であることは、本気で売ろうとしていない事が分かった時点で察した。これはバルミューダの情報弱者商売を広めるための広報活動。そのツールとして「スマホ」が選ばれた。

なぜゲーム業界じゃだめなのか、なぜ車業界じゃだめなのか。そんなのは簡単。スマホが最も大きな市場だから。そして安いから。

ゲームをしていなくてもスマホはもってる。車を持っていなくてもスマホは持ってる。普及率の高さ=宣伝するには最も大きな市場であるから、そこで広告を打つのは効果的。俺もそうする。

そして、バルミューダフォンの研究開発は6億弱とされている。案外安い。ソフトバンクの力を使ってわずか27,000台を売りさばくだけで約27億。これだけの広告効果を得ながらも儲かるボロい商売である。

もちろん企業として儲けることは大切だが、俺はそれ以上に良くも悪くも注目されるる広告としての役割が初代バルミューダフォンでは強いのでは無いかと思う。

なぜなら、今回の初代バルミューダフォンに注目したユーザは、今後も注目するだろうし、顧客になる可能性があるから。

低すぎる目標台数は次期モデルを売りさばく時の実績作り

バルミューダはソフトバンクとタッグを組んでいるが、販売目標台数は先述通り27,000台らしい。あのソフトバンクが抱えるユーザからすると鼻くそみたいな台数である。俺はこの目標台数は達成すると思っている。

少量の目標台数から目くそほどしか売れなくても「販売好調」と言える。鼻くそのような目標台数を超えたら「大ヒット」だ。

これで2代目バルミューダフォンを売りさばく時に「初代バルミューダフォンは非常に人気の高い機種でした」と言うことができ、「すごく売れている」とイメージを植え付けることができる。

その為には大ヒットさせなければいけない。どうするか、そうだ販売目標台数を少ないして大ヒットを作るんだ。そしたら実績になる。

ここで撤退したら単なるバカ。これは戦略だ

バルミューダが自ら評判を落とすようなスマホ市場に参入して騒がれたことは、これまでのバルミューダブランドのイメージを崩してしまうような行為でもある。しかし、先述通りそれはバルミューダも想定済み。とうか想定出来てなかったら相当バカ。

だからこそ、そんな状態で撤退するだろうか。

ソフトバンクとタッグを組むこと自体が難しいのに、その繋がりを簡単に手放すのだろうか。知名度を向上するための広告塔というバルミューダフォンは一発屋だとマイナスイメージが広がるだけなのに撤退するのだろうか。

あのバルミューダだ。そこで終わるはずが無い。ここからが本番である。

まずは簡単に達成できる目標台数以上を販売し「大ヒット」という実績を作ろうとしているのではないか。そして、その実績を武器に次につなげようとしているのでは無いだろうか。

いまのところ、ある意味バルミューダフォン戦略は大成功と言える

バルミューダフォンは情報が出始めてからずっと興味があった。

なぜ、バルミューダがスマホ市場に?なぜバルミューダはソフトバンクとタッグを組む?なぜそんな性能で出す?なぜ目標台数がそんなに少ない?

すべての疑問は、初代バルミューダフォンは情報弱者商売と考えれば腑に落ちる。

情報弱者に対して俺は可哀想と思わない。

バルミューダだから買うのも勝手、ソフトバンクで勧められて買うのも勝手。俺には関係ないし。

そもそも情報弱者に対しこんなところでどんなに騒いでもその声は届かないし、それらの情報には辿り着かない。それが情報弱者であり、それをターゲットにする情報弱者商売はビジネスとして確立されている。

「初代」バルミューダフォンは、そういった層を狙った製品である。できるだけインパクトある広告を安く打ち、情報弱者から回収する。それは次に繋げるため。

そのようなシナリオであれば、ある意味バルミューダフォンの戦略は大成功中だ。

今後の戦略を予想してみる

初代バルミューダフォンは知識ある人から見るとトンデモナイ製品だったはず。ただ、これが2代目、3代目と続くのであれば、バルミューダも少しずつ軌道修正するはずだし、イメージ戦略の1つとして盛り込んでるはず。

価格帯性能のバランス、扱いやすさを整えながら、スマホではなかなか見ないデザイン性をウリに展開を重ねファンを増やす。そうすることでバルミューダフォンの確固たる地位を少しずつ築く。というシナリオなのでは無いかと妄想してる。

まあしばらくの間は出す製品が情報弱者向けだと言われるかも知れないけど、そのイメージはシリーズを重ねる中でスマホの仕上がりを調整しながら転換してくるはず。

我々メディアの反応もバルミューダ戦略の駒

我々メディアの反応もバルミューダの戦略上にあるはず。

メディアなどで酷評している人も次のバルミューダフォンは出ないと言う人も次のモデルが出たら書くだろうし、少しでも良くなってたら「前回はかなり酷かったけど、今回はまともになった」とかプラス印象で取り上げるはず。

そうなるとインフルエンサーも同じ様な方向性でネタにできるし、勝手に広めてくれる。

我らはバルミューダが何も言わなくても勝手に情報を良くも悪くも発信する強力な無料の広告塔。これを利用せずにどうする。

多くのメディアではマイナス印象の情報発信(想定済み)だったがその威力は十分に検証出来たはず。その無料で強力な広告塔を操ることも重要な戦略の1つだし今後も上手く活用してくると思う。

もしそうでなければバルミューダの社長は単なるアホでスマホ作りたいってワガママ言っただけのバカ社長だ。とレッテルすら貼られる。よ!バカ社長!ってか。

でも、あのバルミューダだ。そうではないと俺は思ってる。

俺らみたいな情報発信者はバルミューダの戦略上で転がされているんだろうなと。ころころころ。

初代は情報弱者をターゲットにして話題性を重視。次からはプラス評価の獲得とシェア拡大。ざっくりとこんな流れになるんじゃないかと勝手に想像してる。

俺はこんな感じでバルミューダのスマホ参入を見ていて面白い製品だなと思った。次のバルミューダフォンにも期待している。以上。

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